骨董品
2026.09.25

実家や親族の家を整理していると、割れたり欠けたりした陶磁器が出てくることがあります。遠方に住んでいる場合、現物を見せずに修理を頼めるのか、家財の中に骨董品が混ざっていたらどうすればよいのか、不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、金継ぎ・陶磁器修理に対応する工房を10社紹介するとともに、依頼先を選ぶポイントや依頼前に知っておきたい注意点を整理しました。
※本記事は編集部が各社の公開情報をもとに作成しています。掲載順は優劣を示すものではありません。
金継ぎは、割れたり欠けたりした陶磁器を漆と金属粉で修理する、日本古来の技法です。継ぎ目を金や銀の線として見せることで、器に新しい表情を与えます。工房ごとに対応範囲や納期は異なるため、依頼前に確認しておきたいポイントを5つ紹介します。
金継ぎとは、割れたり欠けたりした陶磁器を漆と金属粉で修理する、日本古来の伝統技法です。継ぎ目を隠さず、金や銀の線として見せることで、器に新しい表情を与える点に特徴があります。
修理に使われる漆は天然の樹液から作られる素材で、接着剤と充填材の役割を兼ねています。この仕上がりの模様は「景色」と呼ばれ、器ごとに異なる表情を楽しむ文化として受け継がれてきました。
金継ぎには、本漆だけを使う伝統的な方法と、合成接着剤を用いる簡易的な方法があります。本漆は乾燥に湿度管理が欠かせず、仕上がりまで数ヶ月を要するのが一般的です。
天然素材だけで仕上げるため、口に触れる器や日常的に使い続けたい食器に向いています。一方の簡易金継ぎは乾燥期間が短く比較的早く仕上がりますが、食器として安全に使えるかどうかは使用する材料によって差があります。
陶磁器だけでなく、ガラス製品や漆器、木製の置物まで対応範囲は工房ごとに異なります。ガラスは漆の付きが悪く専用の技法が必要になるため、対応を見送る工房も少なくありません。器の素材が決まったら、対応可否を事前に確認しておくと安心です。
金継ぎの費用は、破損の状態によって大きく変動するため、一律の金額を示すことが難しい修理方法です。欠けの大きさや割れの破片数、ひびの長さなど、複数の要素が組み合わさって最終的な料金が決まります。
仕上げに使う金属の種類によっても価格帯は変わり、純金仕上げは高額になりやすく、銀や漆のみで仕上げる漆直しは抑えられる傾向にあります。正確な金額を知るには、写真や実物をもとにした見積もりが欠かせません。
本漆金継ぎは数ヶ月単位の時間がかかるため、急ぎの場合は簡易金継ぎに対応する工房を検討する方法もあります。また、修理後に不具合が生じた際の保証制度があるかどうかも、確認しておきたい点です。
家財の整理で見つかった器に、作家物や時代のある骨董品が含まれている場合は、金継ぎ工房への相談前に、骨董品・美術品の専門業者へ価値を確認してもらう方法もあります。
割れたり欠けたりした陶磁器を修理に出す場合、どの工房に相談するかで対応できる技法や仕上げの選択肢は変わってきます。対応エリアや特徴とあわせて10社を紹介します。
公式サイト:https://www.studio-on.net/
スタジオ温は、木と漆を扱う仕事から活動を始めた工芸ユニットです。家具製作から寺社建築の漆内装工事まで、幅広い分野での経験を重ねてきました。金継ぎ教室を主宰する工藤かおる氏は、本格的な金継ぎの技法書を出版社から刊行しています。日常的に食器として使われることを想定し、安全性を第一に本漆を使った金継ぎにこだわっている点が特徴です。
こんな方におすすめ:金継ぎを基礎から学びながら、自分自身でも修理に挑戦してみたい方
公式サイト:https://www.kintsugi.net/
京都金継ぎ白金堂は、京都市右京区の御室・仁和寺前に工房を構える陶磁器修理の専門店です。漆と純金・純銀・白金などのパウダーを使用し、実用的な修理と新しい景色としての価値づくりを目的としています。個人客だけでなく、料亭や旅館、寺社仏閣といった法人からの依頼も幅広く受けている点が特徴です。欠け・割れ・ひびそれぞれについて、大きさや破片数に応じた料金表を公開しています。
こんな方におすすめ:料金の目安を事前に確認した上で、依頼先を検討したい方
公式サイト:https://ninho.net/
ninhoは、大阪・南森町にギャラリーを併設した金継ぎ工房です。使用する材料を本漆のみに絞り、「本金継ぎ」の技法で美術品・器の割れ物修理に取り組んでいます。欠け・ひび・割れという破損の種類ごとに基本料金を設け、金消粉・金丸粉・銀粉・漆仕上げといった仕上げの選択肢に応じた料金体系を設定している点が特徴です。修理対象は陶器・磁器に限られ、過去に接着剤で手を加えた器については依頼を断る方針を取っています。
こんな方におすすめ:美術品や器を本漆だけで修理したい方、料金の内訳を事前に確認した上で依頼したい方
公式サイト:http://hakatashitsugei.jpn.org/
博多漆芸研究所は、天然漆をはじめとした自然素材のみを使用し、溶剤を一切使用しない独自手法「自然派金継ぎ」を展開する工房です。この技法は、登録商標として正式に認められています。漆やおがくず、小麦粉、珪藻土、菜種油、水といった自然素材のみを用いる点が特徴です。見積もりはLINEでの事前相談から始まり、通常4ヶ月ほどの制作期間を要します。
こんな方におすすめ:化学物質を使わない、自然素材だけの修理にこだわりたい方
公式サイト:https://kintsugi-kanamaru.com/
金継ぎ工房かなまるは、70年以上続く老舗陶器店での勤務を経て独立した本山要氏が営む工房です。年間300件以上の金継ぎ依頼をこなしており、国内外から依頼を受けています。他店で断られたガラス製品などの修理相談も受け付けている点が特徴です。修理後は6ヶ月間の無償保証が付き、正しい使い方をしていたにもかかわらず不具合が生じた場合は再修理に対応しています。
こんな方におすすめ:修理後の保証があると安心という方、他店で断られたガラス製品の修理を相談したい方
公式サイト:http://kintunagi.com/
金継ぎ工房八木は、山中漆器の産地である石川県加賀市に工房を構えています。輪島漆芸技術研修所で漆の基礎を学んだ職人が、2004年頃から金継ぎの仕事を始めました。金継ぎのほか、銀継ぎ、赤銅継ぎ、プラチナ継ぎ、スズ継ぎ、漆のみで仕上げる漆直しなど、幅広い仕上げ方を選べる点が特徴です。コップや茶碗、急須など、器種ごとに過去の修理事例と料金の目安を公開しています。
こんな方におすすめ:仕上げのバリエーションを比較しながら選びたい方、過去の修理事例を見て検討したい方
公式サイト:https://www.hirono88.com/
器の郷ひろ埜は、宮城県内に2店舗を展開する伊万里焼・有田焼の専門店です。佐賀県伊万里市に事務所を構え、問屋を通さず窯元より直送の逸品を販売しています。金継ぎ直しについては、自店で購入した商品に限らず、土物や洋食器、ガラス製品まで幅広く修理相談を受け付けています。漆を用いた自然乾燥の工程が必要なため、預かり期間はおおむね1〜2ヶ月となる点が特徴です。
こんな方におすすめ:伊万里焼・有田焼をはじめとした陶磁器の修理を、専門店に相談したい方
公式サイト:https://www.isshindou.jp/gallery/2475/
一心堂は、木彫と漆を専門とする工房兼ギャラリーです。築110年の古民家を活用した空間で、木彫品や漆器を展示しています。金継ぎでは、欠けた部分を錆や刻苧(こくそ)で埋めて成形し、黒呂色漆や朱漆を重ねて金粉をまく工程で仕上げます。漆器そのものの修理にも対応しており、部分的な塗り直しから全面の塗り替えまで相談できます。
こんな方におすすめ:金継ぎの工程を具体的にイメージしてから依頼したい方、漆器そのものの修理もあわせて相談したい方
公式サイト:https://kintsugikurashi.co.jp/
金継ぎ暮らしは、東京を中心に4か所の教室を運営する金継ぎ専門の会社です。簡易金継ぎと本漆金継ぎの両方に対応しており、どちらの方法で修理しても食器として使用できる点が特徴です。使用する道具は食品衛生法370号ポジティブリスト制度に適合しており、道具の安全性に力を入れています。修理依頼はLINEまたはメールで受け付けており、症状別の料金目安も公開しています。
こんな方におすすめ:簡易金継ぎと本漆金継ぎを比較しながら、食器として使える修理を依頼したい方
公式サイト:https://kintsugi-rium.jp/
金継ぎ工房リウムは、各地の伝統工芸に関わる永田宙郷氏が、ホテルカンラ京都内に開いた金継ぎ工房です。本漆金継ぎと簡易金継ぎの両方に対応しており、本漆は1.5〜3ヶ月、簡易金継ぎは1ヶ月程度で仕上がります。ひび・欠け・割れそれぞれの料金目安を公開しているほか、送付方法も写真付きで丁寧に案内している点が特徴です。ガラス食器や漆器の修理は、別途見積もりでの対応となります。
こんな方におすすめ:ホテル内という開かれた立地で、職人に直接相談しながら依頼を検討したい方
工房に依頼する前に、破片の扱いや使用条件を知っておくと、やり取りがスムーズになります。特に遠方から発送で依頼する場合は、事前準備が仕上がりを左右します。
破片が揃っているほど、修理はしやすくなります。粉々になった細片は無理に集めなくてよいものの、大きめの破片は保管しておきましょう。接着剤を自己判断で使うと修理が難しくなるため、破損したままの状態で相談することをおすすめします。
金継ぎで修理した器の多くは、電子レンジや食洗機、直火の使用に制限があります。仕上げに使われる漆や金属は、急激な温度変化に弱い性質を持つためです。修理前に、修理後どのような使い方ができるのかを確認しておくと安心です。
本漆を使った金継ぎは、漆の自然乾燥に季節や湿度が影響するため、数ヶ月単位の期間がかかるのが一般的です。急ぎの場合は簡易金継ぎを選ぶ方法もあるため、余裕を持ったスケジュールで依頼しましょう。
金継ぎの依頼を検討する中で、疑問に感じやすい点を5つまとめました。技法の選び方から対応できない器まで、依頼前に確認しておくと安心です。
食器として日常的に使い続けたい場合は、本漆金継ぎが向いています。置物としての利用や、修理期間を短くしたい場合は簡易金継ぎが選択肢になります。
ただし、2025年6月の食品衛生法改正以降、簡易金継ぎの素材は食器の食品接触部に使用できないものが大半です。食器として使う予定がある場合は、食品衛生法適合の材料を使用しているか、各工房に確認しながら選びましょう。
ガラスは漆の付きが悪く、専用の技法が必要になることから、対応を見送る工房も少なくありません。ガラス製品の修理を希望する場合は、対応実績のある工房かどうかを事前に確認しましょう。器の厚みや透明度によっても、仕上がりの見え方は変わってきます。
多くの工房では、写真を送ることで概算の見積もりを案内しています。ただし正確な見積もりには実物確認が必要な場合もあるため、遠方から依頼する際は事前に確認しておくと安心です。
破損状態や技法によって異なりますが、本漆を使った金継ぎでは数ヶ月単位の期間を要するのが一般的です。簡易金継ぎであれば、比較的短い期間で仕上がる場合もあります。工房の混雑状況によっても、期間は前後することがあります。
土鍋や釜など直火で使用する調理器具は、漆の耐熱温度を超えるため向いていません。花瓶の底のように長期間水に浸かる部分の修繕も、適さない場合があります。依頼前に器の用途を伝え、対応可否を確認しておきましょう。
金継ぎ工房を選ぶ際は、技法の違いや対応素材、見積もりの取り方、使用条件、納期と保証という5つのポイントを確認しましょう。器の状態によって適した工房は変わるため、複数の工房に相談してみるのもおすすめです。
家財整理で見つかった骨董品は、修理の前に専門業者への相談も検討してください。だるま3では骨董品・美術品の査定を承っています。
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