骨董品
2026.10.13

「受け継いだ着物をたんすから出したところ、黄ばみや染みが広がっていた」そのような場面に戸惑い、どこへ依頼すれば着られる状態に戻せるのか迷う方も少なくありません。着物の染み抜きや悉皆に対応する専門店は、得意とする加工や受付方法が店ごとに異なります。
この記事では、各地の10社を紹介するとともに、業者選びのポイント、費用の考え方、依頼前の注意点を整理しました。
※本記事は編集部が各社の公開情報をもとに作成しています。掲載順は優劣を示すものではありません。
着物のお手入れは、染みの種類や生地の状態によって、適した方法が変わります。依頼先を選ぶ前に押さえておきたい5つのポイントを、加工の違いから順に解説します。各社の紹介を読む前の目安にしてください。
丸洗いは、仕立て上がりのまま着物全体を溶剤で洗う方法で、皮脂などの油性の汚れに向いています。染み抜きは、染みの原因や生地の状態に合わせて、部分的に処置する作業です。
洗い張りは、着物を解いて反物の状態に戻して水洗いし、生地を張って形を整える方法です。洗い張りの後は、再び着物の形に縫い上げる仕立て直しの工程が必要です。
修理は、今ある生地や柄、思い出の品をそのまま活かせる点が強みです。洗い張りと仕立て直しを組み合わせれば、生地の幅や縫い込みなどが許す範囲で、寸法を現在の体型に合わせることもできます。
一方で、生地が弱っていたり、カビや黄変が進んでいたりすると、元通りにならない場合があります。直す費用が新調や処分に見合うかどうかは、状態を見てもらい、見積もりを取ってから判断しましょう。
費用は、染みの種類や範囲、経過年数、生地の状態、加工の数によって変わります。そのため、料金表だけで総額を判断することはできません。
見積もりが有料か無料か、見積もり後に追加料金が発生するか、落ちなかった場合の扱いはどうなるかを、事前に確認しましょう。送料の負担区分や納期も、あわせて見ておくと判断しやすくなります。
依頼方法は、持ち込み、郵送、出張や集荷の3種類に大きく分けられます。持ち込みは、状態を見せながら相談でき、その場で説明を受けられる方法です。
郵送は、問い合わせ後に着物を発送し、現物の確認を経て見積もりが提示される場合もあります。発送時は、濡れを防ぐためビニール袋に入れ、各店の案内に従って梱包します。
出張や集荷は、対象エリアや最低点数が決まっている場合があるため、事前の確認が欠かせません。
悉皆とは、洗いや染み抜き、仕立てなどの工程を窓口一つで引き受ける仕事を指します。かけはぎや柄足し、金彩といった補修まで対応しているかも、確認しておきましょう。
新規受付の範囲や点数の上限は店ごとに異なるため、条件の確認も欠かせません。他店で断られた染みへの対応や、事故に備えた賠償基準の有無も、判断材料になります。
ここでは、着物の染み抜きや悉皆に対応する専門店を10社紹介します。受付方法や対応エリアは店ごとに異なるため、ご自身の状況に合う店を見比べてください。料金や受付条件は変更される場合があるため、依頼前に最新の案内を確認しましょう。
公式サイト:https://kyoto-kikyoya.com/
大正9年創業の京都の工房で、着物・法衣・装束の染み抜きや汗取り、丸洗いを専門としています。社長は染色補正一級技能士で、染みの原因を見極め、生地を傷めない処置を選びます。染み抜きで難しい変色や穴には、描画による修復や柄足し、金彩修復、胡粉の色修復で対応します。宅配便で送れば無料で見積もりができ、納品まで約1か月が目安、送料はお客様の負担になります。
こんな方におすすめ:染みだけでなく、穴や変色、金彩の剥がれまで相談したい方
公式サイト:http://ms-shiminuki.com/
生き洗いは、着物を解かずに専用の溶剤で手洗いする丸洗いで、衿や袖口、裾から袖の丸みまで細部を確認しながら洗います。下洗いにはパキンという植物繊維の小さなブラシを使い、光量のある染み抜き台で一枚ずつ確認するため、洗浄機はすすぎが中心です。依頼は問い合わせの後に着物を送り、到着後に見積もりと納期の連絡があります。支払いは、クロネコヤマト代引きサービスで、代金引換手数料はお客様の負担になります。
こんな方におすすめ:下洗いを丁寧に行う店に、丸洗いを任せたい方
公式サイト:https://www.shiminukitakase.com/
大正9年創業の「杉本家本店」を源流に持ち、初代の高瀬秋三は洗い張りの機械化と染色補正の技術で、平成13年に黄綬褒章を受章しました。独自の色掛け工法「美術しみぬき」で本来の色に補正し、他店で断られた染みや古い汚れにも可能な範囲で対応します。作業前に無料で見積もりを出して納得を得ており、LINE公式アカウントへ写真を送って相談もできます。
こんな方におすすめ:紋入れや仕立て、リメイクまで、まとめて相談したい方
公式サイト:http://kimono-marujyu.co.jp/
明治38年に起業した東大阪市の店で、呉服や着物レンタル、フォトスタジオに加え、着物クリーニングも受け付けています。丸洗いは、箔や刺繍、絞りを傷めないかを事前にテストし、「衿・袖口・裾の手洗い→ドライクリーニング→自然乾燥→プレス仕上げ」の順に進めます。宅配サービスは、希望の日時に自宅へ引き取りとお届けに伺う方式で、3点以上から受け付け、対象エリア内の出張料金は無料です。
こんな方におすすめ:大阪東部にお住まいで、自宅まで取りに来てほしい方
公式サイト:https://kyo-na.com/
手洗いと「なぎさ式」の機械洗いに、溶剤とオゾンを組み合わせた独自の「なぎさ洗い」を採用しています。お預かりからお届けまでを自社で行う一貫体制で、年間取扱量は13,000枚以上です。溶剤は酸化測定などで管理し、専属の和裁士も常駐するため、お直しまで同じ店で相談できます。郵送の納期は通常3週間〜1か月で、万一の事故にはクリーニング賠償問題協議会の基準で補償します。
こんな方におすすめ:洗い方や溶剤管理の考え方を確認してから預けたい方
公式サイト:http://takumi-hldgs.co.jp/group/wasou/
自社工場で、丸洗いや染め直し、かけはぎ、紋入れ、仕立てまでを一貫して行います。受付後は専用の管理システムで受注と納期を管理し、衿や袖口、泥はね、汗など汚れやすい箇所を超音波やブラッシングで予洗いします。洗いは着物専用の洗濯機で、水洗いかドライ洗いを一点ずつ行い、乾燥は専用のボイラー室で時間をかけて行います。仕上げは除湿仕上げ機で行い、検針器で検査するほか、紋付きは紋の箇所に和紙を挟んで色移りを防ぐなど配慮も十分です。
こんな方におすすめ:作業工程を一つずつ確認してから預けたい方
公式サイト:https://www.shiminukiko-bo.jp/
親子2代で60年以上続く個人経営の店で、新規の方は着物の丸洗いと、着物や洋服の染み抜きを依頼できます。染み抜きは大量処理するのではなく、一着ずつ時間をかけて行うのが特徴です。品物を預かって試験的に染み抜きし、リスクを確認してから有料の見積もりを出します。見積もりに納得してもらってから作業するため、仕上がりまでは通常数か月、場合によっては年単位かかります。急ぎの依頼は受けず、染み抜きが不完全なら料金は受け取らない方針です。遠方からの宅配は、発送前に連絡が必要です。
こんな方におすすめ:時間がかかっても、慎重な染み抜きを望む方
公式サイト:http://www.marutoshi529.com/
1921年に金沢の近江町で創業した呉服店で、加賀友禅を中心に、着物や帯、和装小物を取り扱っています。購入後のお手入れも受け付け、丸洗い・洗い張り・染み抜き・染め替えを案内しています。丸洗いは着物をほどかず揮発溶剤で洗うドライクリーニングで、染み抜きは部分的な作業のため料金を抑えやすい加工です。雨や飲み物をはじくパールトーン加工は店内で申し込め、汚れが付いた場合の無料お手入れも用意されています。
こんな方におすすめ:金沢周辺で、着物の購入先とお手入れ先をまとめたい方
公式サイト:https://www.shiminuki-kinu.jp/
昭和49年創業の着物専門染み抜き店が手がけるクリーニング店です。クリーニング師と一級染み抜き師の技能を、同じ事業所に備えています。染み抜き師は3名在籍し、必要に応じて染色や色掛け、柄足し、金彩加工といった京友禅の加工にも対応します。職人が状態を直接確認するため持参での来店を勧めており、受付時に見積もりを出して後払いで精算します。令和6年7月から遠方客の受け入れと配送は一時停止中で、インクや塗料、色移りなどの染料取りは対象外です。
こんな方におすすめ:山形近郊で、和服と洋服をまとめて相談したい方
公式サイト:http://wasen.jp/
宇治市に店舗を構える着物総合加工店で、年間2万点以上を扱い、会員数は6,000名を超えます。丸洗いの前に衿や袖口、裾を職人が手作業で下洗いし、仕上げ後は雲竜紙のたとう紙に収めて発送します。染み抜きは点検後に見積もりを出し、了承を得てから進める流れです。寸法直し・ほつれ直しは、国家検定技能士の専属和裁士が担当します。ホームページ掲載料金での依頼は1人10点までで、仕立て部門は2026年10月現在受付を休止しています。
こんな方におすすめ:インターネットで依頼を完結させたい方
依頼先が決まっても、事前の準備や心構えによって、仕上がりへの満足度は変わります。家庭での対応、受付条件、仕上がりの限界という3点を確認しておきましょう。着物は一点ごとに状態が異なるため、情報の共有が欠かせません。
染みを見つけると、水でたたいたり、ティッシュでこすったりしたくなるものです。しかし、染みが広がったり、生地が擦れて傷んだりして、かえって落ちにくくなる原因になります。
水や洗剤を使った自己処理は避けましょう。付着したばかりの液体は、乾いたハンカチなどでこすらず軽く押さえて吸い取り、早めに専門店へ相談してください。染みの位置や原因がわかる場合は、あわせて伝えましょう。
店によって、新規客の受付範囲や点数の上限、送料の負担、遠方からの受け入れ可否が異なります。染みの種類や生地の状態によっては、処理を受け付けられない場合があります。また、受付可能な染みでも、返金制度などの対象外となる場合があるため、条件を確認しましょう。
古い染みや黄変は、時間がたつほど、完全には落としきれない場合があります。落としきれない場合の選択肢が、色掛けや柄足し、金彩などの補正加工です。納期は数週間から数か月かかる店もあるため、着用日が決まっているときは、早めに伝えておきましょう。
着物の染み抜きや悉皆を依頼する前に、疑問に感じやすい点を5つにまとめました。洋服との違いや梱包方法など、依頼前につまずきやすい内容を取り上げます。気になる項目から読み進めてください。
着物は絹などの繊細な素材が多く、仕立て方や染めの状態も一点ごとに異なります。洋服向けの工程では対応が難しい場合もあるため、着物の取り扱い実績を持つ専門店への相談が安心できる選択肢です。受付の可否は店ごとに違うので、事前の確認が欠かせません。
落とせるかどうかは、染みの種類や経過年数、生地の状態によって異なります。時間がたって生地が変質している場合は、完全に落としきれないのが実情です。色掛けなどの補正加工を扱う店もあるため、まずは写真や現物で状態を見てもらいましょう。
他店で断られた染みや古い汚れについても、相談を受け付けている店があります。ただし、受付の可否や対応範囲は店ごとに異なるため、事前の確認が必要です。問い合わせの際は、断られた経緯と染みの状態を伝えると、見積もりの相談がスムーズに進みます。
濡れを防ぐため、着物をビニール袋に入れてから、紙袋や段ボールで送るのが基本です。強く圧縮すると深いシワが残る場合があるため、できるだけ着物に負担の少ない梱包を心がけましょう。送料や発送方法は店ごとに異なるので、各店の案内を確認する必要があります。
染み抜きは、染みを取り除く作業そのものを指します。悉皆は、洗いや染み抜き、仕立て、紋入れなど、着物に関わる工程をまとめて引き受ける仕事です。染み抜き専門店でも、悉皆に近い範囲を扱う店があるため、対応する加工を確認しましょう。
着物の染み抜き・悉皆を依頼する際は、加工の違いを理解し、見積もりと受付条件を確かめて依頼先を選ぶことが大切です。ここでは5つのポイントとあわせて10社を紹介しました。まずは気になる着物の写真を撮り、受付方法が合う店へ相談してみましょう。見積もりを取ってから、直すか手放すかを決めても遅くありません。
お手持ちの品の中に骨董品・美術品が含まれる場合は、専門業者に相談することで価値を正しく評価してもらえる場合があります。だるま3では骨董品・美術品の査定を承っています。
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