
着物・織物
2025.08.18
中古着物市場は近年、実家整理やリセール需要、インバウンド観光などを背景に変化が著しく、売れる着物とそうでない着物の差が明確になっています。特に訪問着や紬、帯などの人気カテゴリーはトレンドを押さえることで高額査定につながる一方、状態や証紙の有無によって評価が大きく変わります。本記事では、中古着物市場の最新動向を分かりやすく解説し、種類別の相場や売れ筋、流通チャネルの違い、高く売るための準備ポイントまで幅広く紹介します。初めて査定を検討する方から業者向け仕入れ担当者まで、役立つ情報をまとめました。
目次
中古着物市場はここ数年、安定した成長を見せています。特にリユース市場全体の拡大に伴い、訪問着や紬、振袖などの高額品だけでなく、カジュアルな小紋や半幅帯まで幅広く取引されるようになりました。市場規模は直近5年でおおむね年率5~8%の伸びを示し、オンラインプラットフォームやフリマアプリの普及も後押ししています。これにより、個人間取引だけでなく、業者間の仕入れ・卸売市場も活性化し、需要と供給の多様化が進んでいます。また、作家物や産地物はコレクター需要により価格が安定しており、一般的な中古着物と比較して高値がつく傾向が続いています。
新型コロナウイルスの影響で、外出やイベントの機会が減少した一方、自宅での整理やリユース意識が高まったことから、着物の売買動向にも変化が見られました。特に実家整理や遺品整理を契機とした出張買取・宅配買取の利用が増加し、従来の店舗中心の取引からオンライン・非対面取引への移行が加速しています。さらに、SNSやオンラインマーケットを通じた若年層の中古着物購入も増えており、デザインや素材、サイズのトレンド情報を事前にチェックする消費者が増えています。これにより、単に「売る・買う」の市場だけでなく、情報収集型の需要も重要になっています。
中古着物市場で特に人気が高いのは、訪問着、紬、袋帯の三大カテゴリです。訪問着は成人式や結婚式などのフォーマル需要に支えられ、季節や柄によって価格が変動します。紬は普段使いからカジュアルコーデまで幅広く対応できるため、若い世代やリメイク用途でも注目されています。袋帯はレンタル業者や着付け教室などB2B市場でも根強い需要があり、作家物や金銀糸を使った高級品はプレミア価格で取引されることもあります。全体として、需要は「フォーマル>カジュアル」ですが、最近はSNS映えを意識したカジュアル着物の取引も増加傾向です。
中古着物を購入する層は大きく3つに分かれます。60代以上の実家整理層はフォーマル着物を中心に、価値判断と高額売却を目的に取引する傾向があります。30~50代のリセール・レンタル関係者は、回転率や利益率を重視して仕入れを行います。さらに20~30代の若年層はSNS映えやリメイク用としてカジュアル着物を手頃な価格で購入するケースが増えています。こうした層ごとの目的や好みに応じて、人気の柄や素材、サイズのトレンドが変化し、売れる・売れにくい着物の線引きが明確になっています。
着物の需要は季節や行事に大きく影響されます。成人式シーズンの1月は振袖や訪問着、卒業式や七五三の春は袴・訪問着、秋は観光やイベント向けの小紋・紬が活発に取引されます。また、夏季は浴衣や絽・紗の着物が注目され、暑さに合わせた素材選びも需要の変動要因です。これらの需要カレンダーを押さえておくことで、売却タイミングや仕入れタイミングを最適化でき、価格の安定や回転率向上に直結します。
近年、海外バイヤーやインバウンド観光客向けの需要も中古着物市場に新たな成長要素をもたらしています。羽織や帯、リメイク用の反物は海外で人気が高く、日本国内での仕入価格と輸出価格の差を活かしたビジネスが拡大しています。また、SNSやECを通じた販売が中心となるため、サイズや柄の人気傾向、通関・配送ルールを理解することが成功の鍵です。特にヴィンテージ着物や作家物は海外評価も高く、国内需要とは異なる価格帯や人気カテゴリが存在します。
中古着物の買取方法には、主に店頭買取、出張買取、宅配買取の3種類があります。店頭買取は、直接店舗に持ち込むことでその場で査定・現金化が可能で、即時性が魅力です。ただし持ち運びの手間がある点がデメリットです。出張買取は、自宅まで査定員が訪問し、その場で査定・買取が行えるため、量が多い場合や高額品の評価に便利です。宅配買取は、配送で着物を送るだけで査定が受けられ、遠方や忙しい方に適しています。いずれも、事前に写真や情報を送ると簡易査定が可能で、トラブル防止にもつながります。
個人間での取引では、フリマアプリやオークションサイト、専門ECサイトが活用されています。フリマアプリは手軽さが強みで、比較的安価なカジュアル着物やリメイク素材の取引に向きます。オークションは希少価値の高い作家物や産地物の販売に適しており、競争入札によって価格が上がることもあります。専門ECは定期的なリピーター獲得やブランド化に強みがあり、ヴィンテージ着物や高級品の安定した販売チャネルとして利用されています。
有名作家物や伝統工芸品は、一般的な流通とは異なるルートで取引されることが多く、業者間のオークションや専門店、骨董市での流通が中心です。価値の判定には落款や証紙の確認が重要で、状態・来歴の明示が査定額に直結します。また、高単価品は梱包や配送に細心の注意が必要で、専門の宅配サービスや保険付き配送を利用することが一般的です。
中古着物を高く売るためには、まず状態の確認が不可欠です。シミやカビ、色褪せは査定額に大きく影響するため、目立つ汚れは専門業者に相談してクリーニングするか、正直に状態を伝えることが重要です。特に裄丈や身丈に異常がなく、布地の劣化が少ないものは評価が高くなります。また、胴裏や共帯の変色も査定対象となるため、事前にチェックしておくことで減額リスクを回避できます。
帯締め、帯揚げ、草履やバッグなどの付属品が揃っていると、査定額がアップする可能性があります。また、作家物や産地物の場合は証紙や証明書の有無が評価に直結します。これらの付属品は、汚れや破損がない状態で保管することが重要です。査定前に整理し、付属品が揃っているかを確認するだけでも、査定額に差が出るケースがあります。
査定やオンライン買取では、写真の見やすさが重要です。全体像を写す全身写真に加え、柄や落款、状態が確認できるアップ写真を複数枚用意しましょう。光の反射や影が少ない自然光で撮影すると、より正確な評価が可能です。
宅配買取の場合は、着物が折れ曲がったり湿気で傷むことを防ぐため、巻いて薄紙で包み、緩衝材で保護します。帯は別に折らず丸めて梱包するとしわになりにくく、評価額維持に有利です。配送ラベルや送り状に内容物を明記することも、トラブル防止につながります。
訪問着や留袖はフォーマル着物として安定した需要があります。訪問着は落ち着いた色合いの四季柄や、季節行事に合わせた花柄が人気です。相場は状態や作家によって幅がありますが、一般的には1万円~5万円程度が目安です。留袖は黒留袖、色留袖ともに結婚式やお宮参りで需要が高く、比較的高額で取引されます。作家物や伝統的な友禅染の場合は5万円以上の評価も期待できます。
紬はカジュアル着物として幅広く使われ、プレーンな柄は5,000円前後、作家物や希少産地物は2~10万円以上で取引されることもあります。袋帯はレンタル事業や着付け教室で回転率が高く、状態が良いものは1万5千円~3万円ほどが相場です。振袖は成人式や記念行事での需要が中心で、新品同様の美品や人気柄は10万円以上で取引されるケースもあります。
有名作家や伝統産地の着物はプレミア価値があります。大島紬、結城紬、加賀友禅などは、証紙・落款・共帯の有無や色柄、状態により価格が大きく変動します。近年は海外需要もあり、国内評価だけでなく国際相場も影響するため、直近の落款相場や受賞歴を確認することが重要です。
業者向けの中古着物仕入れでは、需要のピークを意識したタイミングが重要です。成人式前の振袖、七五三・卒業式前の訪問着などは回転率が高く、効率的な在庫管理が求められます。回転率は商品カテゴリーや価格帯によって異なりますが、一般的には高回転品を優先的に確保することが利益確保のポイントです。
ロット購入や卸売市場を活用すると、1点あたりの仕入単価を下げつつ、種類・サイズのバリエーションを確保できます。また、業者間オークションや委託市場では、希少品や作家物も効率的に入手可能です。まとめて仕入れることで、回転率や粗利の管理が容易になり、B2B事業の収益安定につながります。
仕入れ価格、送料、クリーニング費用、梱包コストなどを含めた粗利計算は必須です。価格帯別に利益率をシミュレーションすることで、どのカテゴリを重点的に仕入れるか判断できます。特に高額作家物は保管コストや減価償却を考慮する必要があり、販売価格とコストのバランスが事業成功の鍵です。
出張買取では、事前に査定員の身分確認、買取条件の明示、同意書の確認が重要です。宅配買取では配送中の紛失や破損防止のため、梱包方法と配送保険の確認が必要です。事前に査定条件や手数料を理解することでトラブルを回避できます。
シミ・カビ・色褪せ・仕立て直しが必要な着物、付属品や証紙が欠けているものは低額査定の対象になります。また、素材が化学繊維である場合や明らかに市場価値の低い品も買取不可となることがあります。事前に査定基準を確認しておくことが安心です。
遺品整理や相続で着物を売却する場合、相続人全員の同意を確認し、書面で記録することが推奨されます。これにより後日トラブルになる可能性を低減できます。買取業者側も必要書類を明示しており、スムーズな取引を実現できます。
中古着物市場は、需要の多様化とオンライン流通の拡大により活発化しています。訪問着・紬・帯などの人気カテゴリーや、作家物・産地物のプレミア需要を押さえることが高額査定のポイントです。また、季節・行事・年齢層による需要変化や、国内外のトレンドを把握することで、売却・仕入れのタイミングを最適化できます。
売却を検討される方は、まず無料査定を利用して写真3枚で簡易見積もりを受けるのがおすすめです。また、種類別相場や需要カレンダーをまとめた最新PDFをダウンロードすれば、売却タイミングや高額査定のコツを手軽に確認できます。これらの情報を活用して、中古着物の価値を最大化しましょう。